
2025年1月頃から、フランスで、ジョージ・オーヴェルのディストピアSF小説『1984』が異例の売り上げを記録しているらしい。昨年の1月といえば、ちょうど、第2次トランプ政権が発足した頃である。
オーウェルが『1984』で描いたのは、全体主義国家における国民の隷従、言語と思考の収奪、そして歴史の改竄であった。事実を「フェイク」として否定し、科学者や知的思考を忌み嫌い、根拠のない陰謀論を撒き散らし、暴力によって世界の秩序を破壊しようとするドナルド・トランプの暴挙が、まさに『1984』の独裁者ビッグブラザーを彷彿とさせるのかもしれない。また、こうしたトランプの横暴さに対して、国際社会は及び腰である。そうした世界の情勢を目の当たりにして、フランスの若者たちは、混迷としたディストピア社会の到来に不安を抱いているのかもしれない。
日本も他人事ではない。現在、国会で審議されている「国家情報会議」は、外国のスパイ活動を口実に、国民を監視する仕組みづくりの端緒に他ならない。このまま放っておけば、「漠然とした疑い」だけで僕たちの生活は監視され、情報が国家に掌握され、プライバシーは失われるだろう。まさに、『1984』で描かれた「テレスクリーン」(テレビジョンと監視カメラを兼ねたような装置)と「思想警察」が現実のものとされようとしている。オーウェルの『1984』を予言の書としないために、今、僕たちには何ができるのか…。
