
気候危機緩和策としてのネイチャーポジティブ
猛暑や豪雨など、気候温暖化を要因とする自然災害が相次いで発生している今日、その影響や被害に備えた「適応策」を講じるはもちろん必要ですが、気候温暖化そのものを抑え込む「緩和策」も大切です。
ここ数年、市内の市街化地域において急速に森林が失われていくのを目の当たりにしています。しかし、私たちの生活を快適で豊かなものにするには自然環境や森林はなくてはならないものです。また、地球温暖化の「緩和策」においては、CO2の排出量を削減していくのはもちろんのこと、同時にCO2の吸収源である森林をしっかりと育てていくことも大切です。そこで、自然環境や生物多様性を保全するだけではなく、むしろ再生していくというポジティブな視点からゼロカーボンシティを宣言した本市の環境施策について幾つかの提案をしていきたいと思います。
質問1
まずネイチャーポジティブに対する本市の見解をお伺いします。
回答
ネイチャーポジティブでございますが、環境省のホームページに掲載されていますが、日本語訳で自然再興といい、自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させることを指すとされています。その趣旨は、これまでの自然環境保全の取組だけではなく、社会、経済全体に改善を促していくことで自然環境の悪化を止め、プラスの状態にしていこうというところにあるとされております。この考え方は、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)やG7(先進7か国首脳会議)においても掲げられております。本市においても、生物多様性を重要なものと捉えており、自然と触れ合う市民向け環境講座や市民団体の活動状況を紹介する環境パネル展などを開催し、多くの方に生物多様性への興味関心を持っていただけるよう取り組んでおります。
質問2
ネイチャーポジティブとは、現在進行している自然環境や生物多様性の悪化を止めるだけではなく、改善していくということ、プラスにしていくということであり、本市でも市民への啓発を目的とした様々な施策を実施しているとのことでした。そこで、現在の本市における生物多様性の状況についてお伺いいたします。
回答
本市における生物多様性につきましては、平成22年度に作成いたしました鎌ケ谷市史別巻2にその状況をまとめております。植物は、シダ植物が51種、種子植物が688種確認されております。また、動物につきましては、哺乳類が12種、鳥類が107種、両生類が6種、爬虫類が11種、魚類、貝類、その他水生生物が15種、昆虫類が886種、クモ類が121種確認されております。
なお、外来生物につきましては、令和7年度末現在、市民の方からの情報提供により、アカミミガメ、セアカゴケグモ、オオキンケイギクなどを含む爬虫類2種、魚類2種、昆虫類1種、クモ類1種、甲殻類1種、植物が2種確認されております。 生物多様性に関する調査につきましては、平成27年度に実施いたしました粟野地区公園のみを対象とした調査以降、実施できておりませんが、地球温暖化や外来生物の影響により動植物の種類や生息数に変化が起きているものと考えております。
質問3
本市は東京に近いものの、まだ緑が比較的多いということもあって、いろいろな生物が息づいているということが分かります。ただ、やはり本市においても、地球温暖化だとか外来生物の影響によって動植物の種類や生息数に変化が起きていると考えられるとのことでした。それでは、生物多様性が失われる要因について、本市の見解をお伺いいたします。
回答
生物多様性は、人間の活動によって急速に減少しつつあるとされております。その要因でございますが、社会的価値観や生活様式がもたらす生産及び消費行動により生物資源の過剰な捕獲や採取、化石燃料の大量消費による温室効果ガスがもたらす気候変動、無秩序な開発による土壌や水質の汚染、飼育放棄や貿易による外来種の侵入が挙げられます。本市におきましても、在来種の減少や、先ほど申し上げた外来種の発見、報告があり、生物多様性の変化が見られます。
質問4
ただいまのご答弁にありましたように、生物多様性が失われる要因は大きく言ってしまえば、人間活動による生息地の破壊や環境変化にあります。下総台地の高台に位置する鎌ケ谷市は、かつては緑が豊かで、澄んだ湧水と谷津田、森林や草原が広がり、様々な動植物や昆虫の宝庫でしたが、都市化が進展していく過程で多くの生物種、植物種が姿を消していきました。ちょうど今ですと鳴く虫の季節ですけれども、秋の鳴く虫の代表格でもあるキリギリスの美しい声を今の鎌ケ谷市では聞くことができません。非常に残念なことであり、大きな損失だと思います。
ところで、先ほどのご答弁で温室効果ガスがもたらす気候変動が生物多様性が失われる一要因となっているとありましたが、この地球温暖化と生物多様性の関連性についても、本市の見解をお伺いしたいと思います。
回答
生物多様性と地球温暖化はお互いに影響し合いながら環境危機を加速させ、地球温暖化による気温や降雨の変化、海水温の上昇といった気候変動が森林、湿地、鉱山、河川、沿岸などの自然環境の中で野生動植物の分布の変化をもたらし、そこから得られる資源にも影響が及ぶとされています。一方で、健全な生物多様性そのものは気候変動の影響を緩和する力を持っており、森林や湿地の貯水能力は洪水を緩和し、都市部の緑地は暑さを緩和するなど、自然が本来備えている機能が地球温暖化に対する自然を活用した適応策として役立つとされており、市においても同様に考えております。
生物多様性ちば県戦略/生物多様性地域戦略
質問5
生物多様性の減少と地球温暖化は、相乗的に環境悪化を加速させる一方で、生物多様性の健全化には地球温暖化を抑える機能があるとのことでした。つまり、自然環境を回復し、生物多様性を健全化させるということはゼロカーボンシティを宣言し、脱炭素社会の実現を目指している本市の取組に適合したものだということです。千葉県においては、地域固有の豊かな生物多様性が維持されることによって人間は豊かな生活を送ることができるという観点から、生物多様性ちば県戦略が策定されていますが、この策定目的と概要についてお伺いいたします。
回答
平成19年度に千葉県において策定された、生物多様性ちば県戦略でございますが、県内の里山が荒れ、危機に瀕している状況があり、昔の美しく、のどかな姿が少なくなってしまったことを受けて、全国に先駆けて策定されたという経緯がございます。その目的は、多様な生物とその豊かな命のつながりを育む社会、生物多様性からもたらされる資源が循環する持続可能な社会、人と自然が調和・共存し、その豊かな自然と文化を守り伝える社会を目指すことにあるとされております。
概要でございますが、保全、再生の取組として、地球温暖化対策、里山などの生態系の保全及び再生、野生動物の保護管理を行い、持続可能な利用の取組として農林漁業による生物資源の持続可能な利用の促進が掲げられております。このほか、研究教育分野として調査研究体制を整備し、生物多様性に関する教育を推進し、取組を支える基盤整備として平成20年4月に千葉県立中央博物館内に設置された千葉県生物多様性センターの事業推進体制の整備を実施するという計画が盛り込まれております。
質問6
生物多様性ちば県戦略の目的は、多様な生物とその豊かな命のつながりを育む社会、生物多様性からもたらされる資源が循環する持続可能な社会、人と自然が調和・共存し、その豊かな自然と文化を守り伝える社会、こうした社会を目指すことにあるということで、都市化が急速に進展する本市においても非常に重要なものではないかなと思います。
ところで、この生物多様性ちば県戦略の策定を受けて、県内の自治体においても、生物多様性地域戦略を策定しているところがありますが、その策定状況についてお伺いいたします。
回答
千葉県内の自治体におきましては、千葉市、船橋市、柏市、市川市、流山市、野田市、市原市、いすみ市、一宮町の9市町で生物多様性地域戦略が策定されております。

質問7
県内9市町で策定されているとのことですが、地域で見てみますと、東京に近くて、都市化の進展が著しく自然環境や生物多様性が失われつつある地域、とりわけ県北西部の自治体が多いように思います。鎌ケ谷市と隣接する船橋市、柏市、市川市で策定されているということで、これに本市が加われば、本市を中心とした地域一体で生物多様性の保全及び回復の取組を共同して実施することができるようになるのではないかなと思います。そこで、本市においても、生物多様性地域戦略を策定してはどうかと思うのですが、見解をお伺いいたします。
回答
生物多様性地域戦略につきましては、平成20年度に施行された生物多様性基本法により、自治体による策定が努力義務とされた生物多様性の保全と持続可能な利用に関する基本的な計画となります。本市においては策定に至っておりませんが、令和5年3月に策定いたしました鎌ケ谷市第3次環境基本計画の中で、生物多様性の保全などの取組を位置づけており、環境講座等を通じて市民団体等から生息する動植物についての情報を共有いただき、生物多様性の把握などに努めております。
なお、本市における生物多様性に関する調査については、平成27年度に実施した調査が最後となっており、今後の実施を検討課題としております。 生物多様性地域戦略の策定につきましては、現行の鎌ケ谷市第3次環境基本計画への位置づけも含め、調査研究してまいりたいと考えております。
要望
動植物や昆虫に詳しい市民の方たちから、時折、私のところに希少な動植物や昆虫などの生息についての報告が寄せられることがあります。生物多様性が失われつつあるといっても、鎌ケ谷市には、まだ希少な動植物や昆虫が生息しているのです。こうした動植物や昆虫は鎌ケ谷市の宝ではないかなと思います。ですから、ゼロカーボンを目指す環境施策の一環として、ぜひ生物多様性地域戦略を策定して、生物多様性の保全及び回復に力を入れていっていただけたらと思います。
市内の環境学習について
質問8
本市における市民向けの環境学習の取組についてお伺いいたします。
回答
本市におきましては、市民向けの環境講座を開催しており、令和7年度の実績として、植草共生の森バスツアー、粟野の森たんけんたい、鳴く虫の夕べ、秋の里山探検隊、囃子水から鳥さんぽなど、自然と触れ合う講座をはじめ、廃材や太陽光発電を利用した工作講座なども開催しております。子供や親子で参加される参加者が多く、次世代に向けた環境啓発の取組になっていると考えております。また、毎年度、本庁舎1階にて環境パネル展及び環境フェアを開催し、市民団体等の活動や市の取組を紹介させていただいております。その内容の中から出題するクイズラリーを実施することで展示全体を見ていただくことになり、より深く理解いただけるようになっております。こちらは、世代を問わず多くの方に参加いただいております。今後につきましても、アイデアや工夫を凝らしながら環境啓発となる取組を実施してまいりたいと考えております。

要望
多くの講座が開催されているということが分かりました。また、子供や親子で参加される方が多く、次世代に向けた環境啓発の取組になっているとのことでした。実は、私も幾つかの講座に参加していますが、8月に開催された粟野の森たんけんたいは、定員を大きく上回る申込みがあり、本来は午前中1回の開催予定が、午前、午後の2回開催に変更されたという話を聞いています。このことは自然環境や生物多様性に対する市民の関心が非常に高くなっていることの表れではないかと思います。まさに市の環境啓発の成果ではないかと思うんですね。ぜひ継続していただきたいと思います。
サーティー・バイ・サーティー( 30 by 30 )について
質問9
生物多様性の損失を食い止め、自然を回復軌道に乗せるための目標としてサーティー・バイ・サーティー(30by30)という取組がありますが、この概要及び本市の見解についてお伺いいたします。
回答
サーティー・バイ・サーティーにつきましては、2022年12月に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)にて採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組の中で、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようという目標となっており、我が国においては生物多様性国家戦略において2030年までのネイチャーポジティブ実現に向けた目標の一つとなっております。この取組の中で、国立公園などのほか、民間等による活動により生物多様性の保全が図られている場所を自然共生サイトとして国が認定することで、国際データベース登録及び保全等を促進し、または、その取組を積極的に発信することを目的として、行政、企業、NPO等の有志連合として生物多様性のためのサーティー・バイ・サーティー・アライアンスが設置されております。本市としましても、生物多様性の保全については、国際的な潮流の中で重要な取組であると認識しております。世界は、海と陸地でつながっており、一部の国だけで解決できる問題ではなく、生物多様性の損失を食い止めるため、各国が協力し合うことが不可欠であると考えております。

質問10
サーティー・バイ・サーティーというのは2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようという目標であって、具体的な取組としては環境省が生物多様性が守られている場所を認定する自然共生サイトの制度や、自然共生サイトの認定拡大を目標として設置された生物多様性のためのサーティー・バイ・サーティー・アライアンスがあるとのことでした。このアライアンスは、行政、企業、NPOなどの有志連合とのことでしたが、国内の参加状況についてお伺いいたします。
回答
環境省によりますと、令和8年8月23日現在で自治体、企業、NPO等を含め、国内で1,307団体が参加しており、自治体では110自治体が参加しております。内訳としましては、北海道及び東北地方で14自治体、関東地方で33自治体、中部地方で17自治体、近畿地方で18自治体、中国及び四国地方で15自治体、九州地方及び沖縄県で15自治体となっており、千葉県内では市川市と佐倉市が参加しております。市川市では、国分川調節池の一部が水生生物の生息地としての価値を有し、様々な取組によって生物多様性の保全が図られているとして令和6年度に自然共生サイトとして認定を受けております。 また、佐倉市では、佐倉里山自然公園内にある畔田谷津がニホンアカガエルやサシバなど、希少動植物の生息地として、同じく令和7年度に認定を受けております。

自治体が申請者となっているのは、佐倉市と市川市の他、印西市と野田市。
その他は、個人や企業、学校法人などが申請者となっている。
質問11
参加している1,307団体のうち自治体は110自治体ということで、地域で見ると関東地方は33ということで非常に多い数かなと思います。また、千葉県内では市川市と佐倉市が参加しているとのことでした。あと、市川市では国分川調節池の一部が自然共生サイトの認定を受けていて、佐倉市では佐倉里山自然公園内にある畔田谷津がニホンアカガエルやサシバなどの希少動植物の生息地として自然共生サイトの認定を受けているということでした。本市においても、千葉県レッドリストに記載されているニホンアカガエルやヘイケボタルが生息している中沢の白旗緑地だとか、あとは多様な生物のビオトープでもある粟野の森、キンランなどの希少な植物が確認されている軽井沢用地など、様々な取組によって生物多様性の保全が図られている森林や湿地があるので、自然共生サイトの認定を受けて生物多様性のためのサーティー・バイ・サーティー・アライアンスに参加することを提案したいのですが、本市の見解をお伺いいたします。
回答
サーティー・バイ・サーティーの目標達成のためには、国立公園などのような法令に基づいた保護地域だけでなく、民間等の活動により生物多様性の保全が図られている場所について、各自治体や企業等が自然共生サイトの認定を受け、これを増やしていくことが必要となります。本市においては、現時点では自然共生サイトの認定に向けた取組は実施しておりませんが、森や川などで市民団体が生物多様性の保全に関する活動を実施しており、市主催の環境パネル展等において活動を紹介させていただいております。また、市民向け環境講座として実施している植草共生の森バスツアーにおきましては、会場となる千葉市の植草学園大学内の植草共生の森が令和7年9月に自然共生サイトに認定されており、国の認定を受けた里地、里山を体験することが可能となっております。引き続き、市内の里地、里山における状況を把握し、自然共生サイトとしての認定及びサーティー・バイ・サーティー・アライアンスへの参加につきましても調査研究してまいりたいと考えております。
要望
市が所有する森林や湿地が自然共生サイトの認定を受けるということは、生物多様性を保全、再生する市の取組が国によって客観的に認められ、さらには国際データベースであるOECMに登録されるということを意味します。

環境省のHPを見ると、OECM認定により期待される効果として幾つか書いてありますが、生物多様性を保全、再生するという取組が地球温暖化の緩和につながり、市民生活の環境改善につながるということは、もちろんのこと、市民への環境啓発にもつながりますし、さらには市のブランド力の向上にもつながってくるのではないかなと思います。あと、生物多様性保全推進交付金など、国からの財政支援なども受けやすくなるのではないかと思います。実際、市内の市民団体が保全活動している森でも、この自然共生サイトへの登録を目指しているところもあったりします。ですから、ぜひ市内の自然環境を調査した上で、自然共生サイトの認定及びサーティー・バイ・サーティー・アライアンスへの参加について前向きに検討していただけたらと思います。
